生理のお悩み
生理(月経)に関してのお悩みは多々ありますが、月経前の体調不良、月経痛、月経の出血量が多い、月経不順などが多いと思います。一般的に症状の改善にピルが有効であることが多いですが、現在の子宮・卵巣の状態を知っておくことは大切です。
月経前の症状
PMS(月経前症状群)Premenstrual syndrome
生理前の数日間(3〜10日間)は、どんな方でも多かれ少なかれ不調を感じることが多く、原因ははっきりしていませんが、原因の一つとしてこの時期に増えるホルモンが関係しているといわれています。むくみやすく、食欲のコントロールがしにくくなったり、イライラしたり、憂鬱だったりとストレスを感じやすいですが、生理が開始と共に症状が減少したり、消えたりするものをPMS(月経前症候群)といいます。日本では日常生活に支障が出るほどの方は5.4%と報告されていますが、このような場合は治療が必要です。
PMSとは
PMDD(月経前不快気分障害)Premenstrual Dysphoric Disorder
PMSの中でも、特に気分的な症状が重いものをPMDD(月経前不快気分障害)といいます。日本女性の1,2%がPMDD相当の症状があり、治療が必要といわれています。
治療
生活習慣の改善と、薬物療法があります。
生活習慣の改善
日常の生活で気を付けることとして、規則正しい睡眠や生活、適度な運動、禁煙、カルシウム・マグネシウムの摂取、アルコール・カフェインなど刺激物の制限、仕事の軽減などがあります。
薬物療法
薬物療法では、漢方薬、利尿剤、鎮痛剤、抗精神薬などを選択します。また、低容量ピルが有効なこともありますが、保険適応外となります。
生理痛(月経困難症)
月経困難症は、月経に関連して起こる諸症状のことを言います。月経困難症には、器質的月経困難症(原因となる病気がある)と、機能的月経困難症(病気がない)の、2種類があります。まずは、治療が必要な病気が隠れていないか、診察しておくことが必要です。
主な症状
腹痛、腰痛、嘔気、頭痛、疲労、脱力感、食欲不振などがあります。
診察
超音波検査で、子宮筋腫や子宮内膜症などがないかどうか診察します。検査で筋腫や内膜症などの器質的疾患が見つかった場合には、それに応じた治療を開始します。異常がなかった場合には、症状に応じて治療を行います。
治療
生活の改善
生理前から生理中は、基本的にリラックスした生活がお勧めです。体を冷やさないようにする、締め付けの少ない服装にする、骨盤の血流を良くするため軽いストレッチをする、しっかり睡眠をとるなどして、基本的にはゆっくり過ごしましょう。
鎮痛薬
鎮痛剤の適切な内服で80%の方に効果があると言われています。痛みのピークまで耐えてからの内服すると、効果を実感しにくいです。痛みを感じ始めたら早めに、また毎回強い月経痛がある方は、生理開始と同時に痛みを感じる前から服用することお勧めします。但し、胃が弱い方では、薬により胃に負担をかけることがあるので注意が必要です。
漢方薬
漢方薬服用による治療は、骨盤内の血流をよくすることで月経痛を緩和させる治療です。即効性には個人差がありますが、副作用が少ないのがメリットです。鎮痛薬と併用することも可能です。
低容量ピル
ピルのホルモンの作用で、月経から次の月経までに厚くなる子宮内膜の増殖を抑えることができます。子宮内膜で生産される「プロスタグランジン」が生理痛と関係しているため、子宮内膜を増殖させないことで、月経痛を減らすことができます。月経痛に保険適応のピルもありますが、主に避妊で使用される低用量ピルでも効果があります。
月経困難症とは?
月経不順
月経には、脳‐卵巣‐子宮がそれぞれ関連しています。このいずれかに異常が起きると、月経不順につながることがあります。まず超音波検査で子宮や卵巣の状態、子宮内膜の厚さなどを診察します。また、場合により血液検査でホルモンの数値を測定する必要があります。月経不順は、一時的なものや、多少の乱れがあっても排卵をしているものについては治療の必要性はありません。但し、長期間に渡る無月経の場合については、不妊症や子宮体がんのリスクが増加する為、周期的に生理を起こす必要があります。治療は自覚症状、現在の妊娠の希望などによっても変わってきます。
中枢性排卵障害
原因
精神的なストレス、環境の変化、急激な体重減少、過度の運動による負荷などがあります。
治療
ホルモン剤による治療
高プロラクチン血症
プロラクチン(乳汁分泌ホルモン)は、脳(下垂体)から分泌されるホルモンで、乳腺を刺激して母乳の分泌を促進する働きがあります。妊娠も出産もしていないときにプロラクチンが過剰に分泌されることがあり、これを高プロラクチン血症といいます。
症状
乳汁の分泌、胸が張る、生理や排卵が抑制されるなどがあります。
原因
日常生活での睡眠、ストレス、乳汁刺激、摂食などがあります。病的因子では、下垂体腫瘍、視床下部・下垂体疾患、薬剤性(精神科や消化器科で処方される薬)、原発性甲状腺機能低下症、などがあります。
診断
血液検査でプロラクチン値を調べます。ただし、プロラクチン値は一定ではなく、中には、潜在性高プロラクチン血症といって、ふだんのプロラクチン値は正常なのに、夜間、ストレス、黄体期などに高くなる人もいます。そのため、診断までに何度か検査を必要とすることもあります。
治療
ホルモン剤の内服で治療します。プロラクチン値が高くても無症状の場合には、治療は必要ないこともありますが、その場合は定期的な診察を行う事をお勧めします。
多嚢胞性卵巣症候群Polycystic ovary syndrome(P C O S)
排卵障害による月経不順を起こします。妊娠可能な年齢のうちの、5%~8%にあるといわれます。
原因
はっきりはわかっていませんが、排卵に関係するホルモンバランスの異常と考えられています。
症状
無月経、月経不順、不正出血、ニキビ、多毛、肥満などがあります。不妊症の主な原因のひとつといわれています。
診断
月経不順がある、超音波検査で卵巣に多嚢胞が認められる、血液検査でホルモン値異常が認められる、などにより診断されます。
治療
年齢や妊娠の希望などにより治療方針は変わりますが、子宮体癌のリスクが高くなる可能性がある為、ホルモン剤を使用し月経を起こす治療が必要な場合があります。また将来的に、糖尿病、心血管疾患、脂肪肝などのリスクがある為、長期的に管理が必要となります。
早期卵巣機能不全Early ovarian insufficiency
40歳未満の早い時期に月経が止まってしまう状態です。
原因
不明なことが多いですが、自己免疫疾患、染色体異常、遺伝子異常、医原性(卵巣の手術や化学療法・放射線治療を受けたことによるもの)などが考えられています。
経過
加齢による閉経とは異なり、卵巣の機能が回復することもあります。
治療
長期にわたり女性ホルモンが足りない状態は、更年期症状、骨量の減少、高脂上昇などのリスクがあります。妊娠の希望の有無にかかわらず、数年間のホルモン補充療法が必要となります。
子宮性無月経Uterine amenorrhea
代表的なものとして、アッシャーマン症候群があります。子宮内の手術(子宮内容除去術、人工妊娠中絶)などにより非常に稀に起きるもので、子宮内腔が癒着して無月経となります。