更年期・更年期障害

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※当院では日本産科婦人科学会・日本女性医学学会のホルモン補充療法ガイドラインに従ったホルモン治療を行っております。

今までの処方内容がガイドラインに則していない場合は、変更していただくか、または当院での処方はできかねます。

更年期・更年期障害

そろそろ閉経を考える年代の方で、体調の変化はありませんか?
汗が出て止まらない、やる気が出ない、イライラするなどお困りの方は、婦人科で治療できる場合がありますので、一度ご相談ください。

更年期とは

更年期は女性のライフステージのひとつで、性成熟期から老年期への移行期間と言えます。閉経前後の5年間を合わせた10年間を「更年期」といいます。

閉経とは

「月経」は早い女性では10歳くらいから始まり、その後、性成熟期には定期的に起こりますが、更年期に近づくと卵巣の機能が徐々に低下していくため不安定になってきます。月経が止まることを「閉経」といい、基本的には月経が来ない状態が12か月以上続いた時に診断されます。日本人の平均閉経年齢は約50歳といわれていますが、閉経年齢には個人差があります。

更年期症状と更年期障害の違い

更年期に現れるさまざまな症状のことを「更年期症状」といいます。主な原因はエストロゲンという女性ホルモンの1つが大きくゆらぎながら低下していくことです。更年期症状があることが自体は異常ではないのですが、更年期症状があることによって常生活に支障を来す状態を「更年期障害」と言います。

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更年期症状について

更年期の女性が経験する不調は、実にさまざまです。症状の重さも人によって違いますし、いくつもの症状が重なって現れたり、日によって違う症状が現れたりすることもあります。からだに異常がないのに自覚症状が現れる「不定愁訴(ふていしゅうそ)」は更年期症状の特徴といえます。

更年期障害について

更年期障害は、大きく分類すると、自律神経失調症状、精神的症状、その他の3種類に分けられます。発症の原因としては、閉経に伴うホルモン動態の変化、社会的要因(この時期に生じやすい家族との関係や仕事の影響、身近な人との人間関係など)、心理的な要因(生来の性格や成育歴など)が関係しているとされています。

更年期障害といっても、さまざまな症状が存在するため、その重症度を客観的に判断するのは難しいことが多いです。そのため、日本では、「簡略更年期指数(Simplified Menopausal Index, SMI)」という指標が用いられることがあります。

簡略更年期指数(SMI)

顔がほてる 10 6 3 0
汗をかきやすい 10 6 3 0
腰や手足が冷えやすい 14 9 5 0
息切れ、動悸がする 12 8 4 0
寝つきが悪い、または眠りが浅い 14 9 5 0
怒りやすく、すぐイライラする 12 8 4 0
くよくよしたり、憂うつになる 7 5 3 0
頭痛、めまい、吐き気がよくある 7 5 3 0
疲れやすい 7 4 2 0
肩こり、腰痛、手足の痛みがある 7 5 3 0
合計点
強:症状が強く、日常生活に支障をきたす
中:症状がある程度あり、生活するうえで気になるときもある
弱:症状が時々ある
無:症状が全くない
当てはまる症状の数字を全て足して下さい。

0~25点 異常なし
26~50点 食事、運動に気を付け、注意をしましょう
51~65点 更年期・閉経外来を受診しましょう
66~80点 長期間にわたる計画的な治療が必要です
81~100点 各科の精密検査にもとづいた長期の計画的な治療が必要
ただし、点数が高くなくても症状が強い場合などはご受診をお勧めします。

病院を受診するかどうか悩んだ場合にはセルフチェックとしても有効です。51点以上の場合が医師の診療を受けるかどうかの目安になりますので、該当する方は産婦人科への受診をおすすめいたします。

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更年期障害で受診したらどんな検査を行うの?

更年期障害の悩みで来院された場合には、産婦人科によって異なる場合もありますが、一般的には症状に基づいて問診させていただき、評価します。更年期による症状と別に、甲状腺の機能亢進症や低下症の場合で、更年期症状と似た症状を呈することがありますので、甲状腺機能についても血液検査で調べることがあります。

更年期の症状

ホットフラッシュ

更年期におけるホットフラッシュの症状はいろいろな表現がされます。主に頭の熱感を「のぼせ」、顔の熱感を「ほてり」、全身性の熱感を「身体が熱くなる」などと表現することが多く、血管運動神経症状に分類されます。ホットフラッシュは1~5分間(通常3分以内)持続する熱感を自覚し、血圧変動はないまま脈拍が7~15拍増加するものとさています。通常は上半身を中心に顔面から始まり、頭部・胸部・さらには全身に広がることもあります。発汗を伴うことも多く、夜間に出現すると寝汗として実感されます。ホットフラッシュにより放熱するため、深部体温が低下して冷えを感じる場合もあります。軽いものでは通常2年以内に症状が自然に改善していきますが、10年以上持続することもあります。

*ホットフラッシュの危険因子

ホットフラッシュは早期の閉経、運動不足、肥満、喫煙などの生活習慣が危険因子になるとされています。そのため、適度な運動を心がけ、禁煙を心がけるなどの生活習慣の改善が効果的な場合もあります。ただし、それでも改善しない場合には、ホルモン補充療法(HRT)や漢方療法などで改善する場合もありますので、ご相談ください。

頭痛

頭痛は更年期女性において最もよく訴えのある症状の一つです。男性よりも女性に多いとされる頭痛は片頭痛と緊張型頭痛であり、更年期においてもこれらの頭痛の可能性を考える必要があります。片頭痛や緊張型頭痛などが多いとされています。

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最もよくある「前兆のない片頭痛」の診断基準では、頭痛発作を繰り返し、その発作が未治療の場合には4~72時間持続し、その特徴的な事項としては、①片側性の頭痛で、②拍動性、③中等度から重度の痛みを伴い、④日常的な動作(歩行や階段昇降など)によって頭痛が増悪したり、頭痛で動作が制限される、という4項目のうち、少なくとも2項目は満たし、①頭痛発作中の悪心または嘔吐、②光過敏あるいは音過敏の少なくとも1項目を満たすものとされています。

片頭痛を起こす原因として、特定の食物やアルコール・カフェインの摂取、睡眠不足などが知られていますが、それと並んでエストロゲンが減少することも明らかな誘因の一つであると考えられています。そのため、片頭痛はエストロゲンの「ゆらぎ」が亢進する閉経への移行期に一過性に悪化することが多いとされています。また、エストロゲンの変動がみられなくなる閉経期には軽快するとされます。

*緊張型頭痛
緊張型頭痛の診断基準では、頭痛の頻度が高く、その持続時間が30分から7日間とされ、その特徴的な事項として、①両側性であり、②非拍動性であり、③強さは軽度から中程度で、④日常的な動作で頭痛が増悪しないという4項目のうち、少なくとも2項目は満たし、さらには悪心や嘔吐がなく、光過敏や音過敏があったとしてもどちらか一方のみとされています。片頭痛とは対極の特徴ともいえます。 緊張型頭痛に対するエストロゲンの影響については不明な点も多いですが、閉経後にも症状が変わらない、あるいは悪化したという女性の方が多いです。

*症状が持続する場合、鎮痛薬を内服するなどで対処される方も多いかと思います。もし鎮痛薬を飲んでも改善しない場合や、どんどん増悪する場合などは、専門外来を受診するようにしましょう。

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めまい

更年期障害でめまいが起こる主な原因は卵巣機能が低下することです。これに加齢の影響や身体的な変化、精神・心理的な要因、周辺環境の変化なども複合的に影響して症状が出てくるとされています。ただし、場合によっては脳の障害や内耳や神経の障害によって症状が起こっていることも考えられます。めまいの症状が長引いたり、どんどん増悪する場合、耳鳴りや難聴などの症状を伴う場合などは、他の病気ではないかを診断するために耳鼻科等を受診することをおすすめします。

不眠

更年期の睡眠障害は、のぼせ、ほてり、発汗といった症状より頻度が高く、中高年の50-80%、閉経への移行期に特に多いとされています。原因としては、ほてりや発汗といった血管運動障害が夜間に起こることで夜間覚醒が繰り返し起こり、睡眠が障害されるのではないかと考えられています。また、更年期の様々な心理社会的ストレスが原因となる場合もあれば、エストロゲンの産生低下が直接神経に影響している可能性も考えられています。一般的に男性に多いとされている睡眠時無呼吸症候群が閉経後の女性で増加するとも言われます。

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不眠のタイプは大きく4つに分類され、寝付きが悪くなる「入眠障害」、入眠してから朝起きるまでに何度も目が覚める「中途覚醒」、通常の起床時間より2時間以上早く目が覚めて再入眠できなくなる「早朝覚醒」、睡眠時間は十分なのに深く眠った感覚が得られない熟眠障害があります。

更年期の不眠の原因はさまざまですが、更年期とは関係なく加齢自体が不眠の原因となっていることもあります。不眠の原因を正しく把握することが大切ですので、適切な対処を行うためにも、不眠で悩んでいる場合にはまず専門外来にご相談ください。

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不安症

不安症は男性よりも女性に多いことが知られており、不安症は女性のライフサイクルの中でも思春期、月経前、妊娠中および産後、そして更年期に発症しやすいと言われています。更年期の不安症は、この時期特有の心理的特性や環境的な要因も影響しています。また、ホットフラッシュに関連が高いと言われています。

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更年期に独特な不安の内容として、経過が見えないことによる不安や他の病気ではないかといった不安があります。更年期の症状がホルモンバランスによるものであることは分かっていても、その経過がはっきりしないことや、心と身体が変化していくうえで、どこにそのゴールを求めればよいのかといった不安や戸惑いを感じる人も多いです。それに加えて、子どもの自立や夫婦関係の問題、定年、介護、親しい人の病気などに対し、一つ一つ対応していく必要が出てきます。そういった環境的な要因も強く影響しているとされています。

更年期女性は誰しも不安を感じやすい環境におかれているわけですが、更年期の不安にはいわゆる「正常な」不安と、生活に明らかな支障をきたすような「病的な」不安があります。病的な不安の場合には治療が必要となるのですが、適切な薬物療法や心理療法を取り入れることによって、改善が期待できます。不安に悩んでいる場合には、カウンセリングや専門科を受診して相談するようにしましょう。

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肩こり

肩こりは「後頭部から肩、背中にかけて、筋肉が緊張することによって不快感や違和感、鈍痛などを起こすなどの症状」などと定義されています。肩こりは男性よりも女性に多く、特に中高年層において頻度が高いとされています。女性ホルモンの変動が肩こりに及ぼす影響については分かっていません。一般的には長時間の同じ姿勢、運動不足、精神的な緊張、筋力不足、過労や寒さなどによる筋肉の疲労として発症することが多いです。そのため、同じ姿勢を長くとらない、仕事の途中に休憩をとり、首や肩の周囲の筋肉を休ませるなどが効果的です。特にパソコンや書類作業などをするときには前傾の姿勢になりがちであり、前傾姿勢は頸部の筋肉を緊張させやすいので、肩こりの原因になってしまします。意識して筋肉の緊張をとるように心がけましょう。そのほかにも、精神的なストレスが原因していることもありますので、適度な運動を行い、趣味などで気分転換することも効果的です。

萎縮性膣炎

更年期になると卵巣機能が低下し、エストロゲンが欠乏してしまうことによって膣が萎縮するという変化が起きます。膣が萎縮すると、性行為のときの不快感や痛みを生じやすくなります。また分泌物が減少することによる乾燥やかゆみ、違和感などの症状を自覚される方もおられます。エストロゲンの作用が低下することによって、自浄作用(膣内をクリーンな状態に保ってくれる作用)が低下してしまうため、膣内の細菌バランスが崩れてしまって、細菌性膣炎が起こりやすい状態になってしまいます。細菌性膣炎が起こってしまうと帯下異常(色の変化やにおいなど)につながることもあります。これらの変化を含めて萎縮性膣炎と呼びます。

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萎縮性膣炎の治療

性行為のときの疼痛や違和感がある場合には、膣用の潤滑剤や保湿剤を使用することができます。リューブゼリーやK-Yゼリーといったが膣内でも使用できるものとして購入可能です。こういった製剤を使用しても効果が乏しい場合には、膣や外陰部にエストロゲンを補充するという方法もあります。局所のみに投与する形ですので、エストロゲンによる副作用は少ないですが、ホットフラッシュなどの症状や骨量減少予防効果は期待できません。

萎縮性膣炎の新しい治療法

萎縮性膣炎に対する新しい治療法として、SERMとレーザー治療があります。SERMは2013年に米国でオスペミフェンという薬剤が選択肢として使用できるようになっています。SERMを使用することによって膣上皮の再生や膣のpHの改善が期待され、性交痛などの症状が改善するとされています。レーザー治療としては、2014年に米国にCO2フラクショナルレーザー治療が認められました。レーザー治療によって萎縮した血管が回復したり、膣上皮の厚みが回復したりといった効果が期待されます。日本においては、CO2フラクショナルレーザー治療は保険適応外のため、自費診療となります。高額ではありますが、日本においても美容診療や一部の婦人科でレーザー治療を受けることが可能です。SERMやレーザー治療については比較的新しい治療方法ですので、取り扱いのある医療機関にお問い合わせください。

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甲状腺疾患

甲状腺機能に異常が起こる疾患は女性に多いです。甲状腺機能亢進症の代表であるバセドウ病は20代から50代に好発し、甲状腺機能低下症の代表である橋本病は20代から60代に好発します。したがって更年期女性は甲状腺疾患の好発年齢に相当します。

皮膚症状

皮膚には女性ホルモンであるエストロゲンの受容体が存在します。そのため、更年期にエストロゲンの分泌量が減少することによって、例えば肌が乾燥して皮膚が敏感になる、今まで使っていた化粧品や衣類でもチクチクしたりかゆくなったりする、急にかぶれる、シワやたるみが増えるなどといった症状が出ることがあります。

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皮膚症状の対策

更年期におけるかゆみや湿疹のケアとしては、保湿をしっかりとすることが大切です。洗顔後や入浴後は特に乾燥しやすいですので、なるべく早く保湿クリームを塗るようにしましょう。今まで使用していた化粧品や保湿剤が合わなくなった場合には、敏感肌用のものを使用するなどして工夫してみましょう。熱いお湯に長時間入浴すると、皮脂が奪われて乾燥が悪化する原因にもなってしまいますので、長時間の入浴は避けるようにしましょう。また、紫外線は皮膚のバリア機能を低下させ乾燥を招いてしまうため、紫外線対策はしっかり行うようにしましょう。

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ドライアイ

ドライアイは加齢とともに頻度が増え、パソコンやスマートフォンなどのデジタル機器の画面を見て過ごす時間は増加傾向にあり、ドライアイや眼精疲労をはじめとした不調を感じる方は増えています。更年期女性において、ドライアイの症状が起こることはありますが、関連性はわかっていません。ドライアイの治療としては点眼薬が主体となりますので、眼科での相談が必要です。

尿もれ

尿漏れが頻回に起こったりすることによって、問題となったもののことを尿失禁と言います。症状がひどい場合は、念のため泌尿器科など専門科への受診も検討する必要があります。

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女性に尿失禁が多い理由として、女性は男性に比べて、尿道が短く直線的であり、骨盤底筋群という骨盤内の臓器を適切な位置に保つ筋肉の働きが男性より弱いという特徴が挙げられます。また、閉経によりエストロゲンなどの女性ホルモンが減少すると、骨盤底筋がさらにゆるんできてしまいます。妊娠、出産、加齢、肥満、便秘などもリスクになるとされています。

*更年期の尿もれ 自分でできる対策
自分でできる対策としては、骨盤底筋体操があります。骨盤底筋体操は、意識的に骨盤底筋を収縮(締める)、弛緩(緩める)を行うことで、お腹を下から支える骨盤底を強くする体操です。初めてする場合には、仰向けの体勢で行うとやりやすいです。仰向けの状態で、足を肩幅に開いて両膝を軽く曲げて、体をリラックスさせます。肛門・膣をぎゅっとしめたり緩めたりという動作を繰り返します。これを繰り返すことによって骨盤底筋が鍛えられるため、尿漏れ症状の改善が期待できます。ただし、即効性があるものではありませんので、少しずつ毎日続けると良いですね。

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更年期障害の治療

更年期障害はいろいろな原因が複雑にからみあって症状が出てきていることが多いですので、それぞれに合った治療を行っていくことが必要です。まずは生活習慣の改善を行い、それでも改善しない症状に対して薬物療法を行います。更年期障害の薬物療法は大きく3つに分けられます。

ホルモン補充療法(HRT)

更年期障害は、卵巣機能がだんだん低下していくことによって、女性ホルモンであるエストロゲンの分泌がゆらいできたり減少したりすることによって起こります。そのため、少量のエストロゲンを補うことによって、症状を和らげようという方法です。

特に、血管拡張障害と呼ばれる、ほてり・のぼせ・ホットフラッシュ・発汗などの症状に有効であることが分かっていますが、それ以外の症状にも効果があります。

漢方薬

漢方薬は様々な生薬の組み合わせでできています。そのため、症状が多岐にわたる場合などでも効果を発揮してくれる場合があります。ホルモン療法に抵抗感がおありの方の場合には、漢方療法を希望される方も多いです。

漢方治療では、「証」と呼ばれる患者の体質に基づいて薬剤の処方を行うことが多いです。体力や体格が中等度以下の虚証、中等度以上の実証など、漢方特有の診察を行ってそれぞれの患者様に合わせた方剤を処方していきます。「桂枝茯苓丸」「当帰芍薬散」「加味逍遥散」の3つが婦人科三大漢方としてよく知られています。このほかにも個人個人の体質や更年期障害の症状に合わせて適切な漢方をおすすめさせていただきます。

漢方セラピー|治すチカラが目を覚ます。|クラシエ (kracie.co.jp)

抗うつ薬や抗不安薬など

精神的な症状が中心となっている場合には、抗うつ薬や抗不安薬などを処方することもあります。ほかにも、まわりの人や専門のカウンセラーによるカウンセリングも効果的と言われています。必要に応じて精神科専門医へご紹介を行うこともあります。

ホルモン補充療法(HRT)について

ホルモン補充療法(HRT)で使うお薬について

大きく分けると、以下の2種類があります。

①エストロゲンと黄体ホルモン製剤を与える方法
②エストロゲンのみを与える方法

子宮がある状態の方にエストロゲンのみを補充すると、子宮の内膜に悪い影響を与えてしまうことが知られています。そのため、子宮がある方の場合には、黄体ホルモン製剤を併用します。ただ、婦人科疾患の治療のために子宮を摘出した方の場合は、黄体ホルモン製剤を併用する必要はありませんので、エストロゲン単独で治療を行います。

ホルモン補充療法(HRT)開始前と治療中の検査について

ホルモン補充療法を行う場合には、安全に治療を行っていくことができるかどうかを評価するための検査が必要となります。
*血圧・身長・体重の測定
*乳房検査
*婦人科診察
*血液検査

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血圧・身長・体重の測定

治療開始前と治療中には血圧・身長・体重の測定が必要になります。例えば高血圧の場合には、脳卒中や血栓症のリスクが高くなります。また、BMI 25以上の方についても血栓症のリスクが高くなりますので、治療開始前に高血圧症や肥満の有無を確認しておく必要があります。血圧コントロール不良な高血圧の方や、BMIが30以上の方などにはHRTを行うことができませんが、毎回の診察時にこれらの項目の測定を行い、リスク評価を行うとともに、血栓症リスクが低いとされる薬剤を選択することで、安全に治療を行えるよう考慮します。

房検査

乳がんの方の場合はHRTを行うことができません。そのため、マンモグラフィや乳腺超音波検査などで乳房の評価を行うことで、HRTが禁忌である乳がんや、慎重に使用することが必要な乳腺腫瘍がないかどうかをチェックしておくことが必要です。また、HRT中にも、1年に1回は乳房検査を行うことが必要です。

婦人科診察

子宮頸部細胞診や子宮内膜細胞診、経腟超音波検査を定期的に行うことで、子宮や卵巣の状態を観察します。子宮筋腫や子宮内膜症などは、HRT中に大きくなることもありますので、定期的なチェックが重要です。

血液検査

HRTによって肝機能異常が起こる頻度は低いとされていますが、定期的に肝機能検査を含めた血液生化学検査を行うことで異常を早く発見することが必要です。

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ホルモン補充療法(HRT)を行う時期

ホルモン補充療法に関しては、閉経前または閉経後早期の治療開始が推奨されます。現在閉経していないが症状がある方、閉経したがホルモン補充療法の希望のある方は、早期に治療を開始されることがおすすめです。ホルモン補充療法を開始した場合、何歳まで治療を継続するかについては明確には決まっていませんが、60代に入るとリスクが上昇するため、推奨できません。過去の報告から5年以上のHRT継続投与によって乳がんリスクの上昇が示されたことから、ガイドラインでは5年以上の投与を行う場合には、来院ごとに必要性とリスクを評価することが必要とされています。

ホルモン補充療法(HRT)が使用できない方について

ホルモン補充療法(HRT)は女性ホルモンを補う治療なのですが、女性ホルモンにより悪化するリスクがある悪性腫瘍や、血栓ができやすい方など、HRTを使用できない方がおられます。具体的には、
重度の活動性肝疾患をお持ちの方
乳がん治療中もしくは乳癌既往のある方
子宮癌の方
原因不明の不正出血がある方
急性血栓性静脈炎または静脈血栓塞栓症とその既往がある方
心筋梗塞および冠動脈に動脈硬化性病変の既往がある方
脳卒中の既往のある方 などです。
そのほかにも投与に注意が必要な方もおられますので、適応可能かどうかについては医師が判断させていただくことになります。

ホルモン補充療法(HRT)の副作用について

ホルモン補充療法は使用する薬剤によって副作用は違いますが、身体が治療に慣れてくる数ヶ月で落ち着くことがほとんどです。

*不正出血

子宮がある方の場合には、不正性器出血を起こす場合があります。最初は定期的に出血することが多いですが、半年から1年程度で徐々に出血は止まることが多いです。投与を始める前に不正性器出血の原因となるような病気がないか、子宮頸がん検診や子宮体癌検診、エコー検査でチェックします。

*乳房痛

HRTによって乳房痛の頻度が増加することがあります。頻度としては10%未満とされています。

*片頭痛

HRTによって片頭痛が増悪する可能性もありますが、必ずしも禁忌ではありません。そのため、症状お経過をみながら、もし片頭痛が増悪する傾向があるようならHRTを中止してみるなどするとよいでしょう。

ホルモン補充療法(HRT)に予想される有害事象―各種がん

現在までのところ、ホルモン補充療法(HRT)によりリスクが上昇する可能性があるものとしては、乳癌、子宮体癌、卵巣癌が知られています。逆にリスクが低下する可能性があるものとしては、大腸癌、食道癌、胃癌、肺癌などがあげられます。

乳癌

過去に米国で行われた大規模な研究で、ホルモン補充療法(HRT)を行うことによって乳がん発症リスクが高くなるという報告がされたことがありますが、その後の多くの研究結果から、乳癌リスクは決して大きくないことが明らかになってきています。

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2016年に発表されたHRTに関するGlobal consensus statement においても、「HRTによる乳癌リスクは低く、発生率の増加は1,000人あたり1人以下であり、これらはライフスタイル、肥満、アルコールなどの因子と同等かそれ以下である。また、乳癌リスクはHRTを中止すると低下する」と明記されています。 乳癌発症に及ぼすリスクについては、使用される黄体ホルモンの種類によって異なることが報告されています。そのため、乳癌リスクを少しでも下げたいという場合には、乳癌リスクを高めないとされているホルモン剤を使用すると良いでしょう。

HRTを行う期間が長くなるほど、乳癌発症のリスクが上昇することが報告されています。ただし、子宮がある方に行うHRTでは5年未満の投与であれば乳癌リスクの上昇は確認されていません。また、5年で施行を中止した場合には、その後の乳癌リスク上昇は認めていないため、5年未満の投与であれば安全であると考えられます。

HRTを行った場合であっても、HRTによる乳癌リスクはHRTを中止すると、3-5年程度で消失することが知られています。また、日本人を対象とした研究ではHRTによる乳がんリスクの上昇は報告されていません。そのため、HRTを施行した方は乳癌検診を定期的なフォローアップは必要になりますが、過度に心配することはないと考えられます。

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子宮頸癌

子宮頸がんには扁平上皮癌と腺癌があります。2012年に発表された研究では、EPTを5年以上施行した女性で扁平上皮癌のリスクは低下し、腺癌についてはやや上昇が認められました。そのため、HRTは扁平上皮癌のリスクにはならないですが、子宮頸部腺がんのリスクを上昇させる可能性はあります。

子宮体癌

以前は子宮がある女性に対してもエストロゲンのみを補充する方法を行っていたため、子宮体癌のリスクが上昇するとされていました。しかしながら現在では子宮がある女性については黄体ホルモン製剤を併用するようにしていることから、リスクがかなり下がっています。

卵巣癌

HRTを施行することによって卵巣癌のリスクが上昇する可能性があります。

その他の婦人科癌

子宮肉腫や低異型度子宮内膜間質肉腫はエストロゲンに反応して増殖・進展することから、HRTの禁忌とされています。

ホルモン補充療法(HRT)が使用できない方の対処法

ホルモン補充療法(HRT)が使用できない人をはじめとして、更年期症状については、まずは生活習慣の改善が望ましいです。ご自身でもできることから生活に取り入れるようにすると良いでしょう。例えば、適切な運動習慣は更年期症状の軽減に効果があるとされています。息が切れるほどの激しい運動は必要ありませんが、適切な運動は、閉経後に増えてくる生活習慣病の予防にも効果的ですので、積極的に取り入れていきたいところです。漢方薬やプラセンタ療法が有効な場合もあります。

プラセンタの更年期障害に対する効果は?

更年期障害の治療として、保険適応があるのはメルスモンという注射剤です。プラセンタには、16種類のアミノ酸、核酸塩基、キサンチンおよび6種類のミネラルが含まれるとされています。メルスモンは韓国とロシアに輸出されており、日本を含めてこれら3か国においてのみ承認されている薬剤です。メルスモンには女性ホルモン様作用はないことから、ホルモン補充療法(HRT)の代用とはなりませんが、症状緩和に有効な場合があります。

当院では、プラセンタ配合ドリンク(クラシエ薬品 プラセンタボンリッチ)を取り扱っております。原料は、国産ブタ由来プラセンタエキス粉末です。衛生面に配慮した農場で飼育・管理し、農場による原料証明書が発行された健康なブタの胎盤だけを使用しています。万一、ブタ由来の感染ウイルス及び微生物が混入した場合に備え、ウイルス及び微生物に対する不活化処理が確認された製造ラインで原料を製造しています。

更年期に気を付けたい病気について

閉経というと更年期障害にばかり意識がいってしまいがちですが、女性ホルモンが低下してくることによる影響は一般的な更年期症状だけではありません。性成熟期には女性ホルモンが分泌されていることによって、血管がしなやかに保たれることが知られています。そのため、閉経前の女性は男性と比べて生活習慣病が少ない状態になっています。これが、閉経後に女性ホルモンがなくなってしまうことで、「脂質異常症」「高血圧」「肥満」などの生活習慣病が増加します。これらの生活習慣病は、心筋梗塞や脳梗塞をはじめたとした重大な病気を引き起こす危険因子ですので、閉経後の女性はこれらのリスクを知っておく必要があります。また、骨粗鬆症が増えやすくなります。

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脂質異常症

脂質異常症についてですが、閉経後の女性は悪玉コレステロールとして知られるLDLコレステロールと中性脂肪が増加し、善玉コレステロールとして知られるHDLコレステロールが減少します。これらの変化により動脈硬化が進んでしまうリスクがあります。

高血圧

エストロゲンには血管をしなやかに保つ働きがあります。閉経後にエストロゲンが減少してこの働きが弱くなることによって、血管の柔軟性は低下してしまいます。また、エストロゲンが減少することによって相対的に男性ホルモンが多くなってしまうことから、この相対的な男性ホルモンの働きの増加も高血圧を引き起こす原因とされています。高血圧が持続することで動脈硬化のリスクになってしまいます。

肥満

エストロゲンはエネルギーバランスの調節にも関与しており、中枢神経系に作用して異常な食欲を調節する減らす作用があります。そのためエストロゲンが低下することによって食欲が増加することがあります。これに老化による筋力低下や活動量低下が加わることによって肥満が進んでしまうことがあります。また、男性型とか内臓脂肪型と言われる上半身に脂肪がついてしまう肥満体型に移行しやすいと言われていることから、生活習慣病のリスクも上がり、注意が必要です。

骨粗鬆症

骨は髪や肌と同じように新陳代謝を繰り返しています。古くなった骨を壊す細胞(破骨細胞)と新しい骨をつくる細胞(骨芽細胞)のバランスのとれた働きによって、骨量が安定して強さが保たれています。骨粗鬆症とは、骨の量が少なくなったり、骨の中身の状態が悪くなったりすることで、骨がもろくなり骨折しやすくなる病気です。性成熟期には女性ホルモンが骨の代謝を調節していますが、閉経によって女性ホルモンが減少してしまうことで、骨代謝のバランスが崩れてしまうことから骨粗鬆症を発症しやすくなります。

骨粗鬆症の症状

骨粗鬆症の場合でも、基本的には骨折しない限り明らかな自覚症状はありません。そのため、自分では何の症状もないまま骨粗鬆症の病態が進行していることもあります。健康診断などで調べておくことが必要です。

骨粗鬆症のリスクが高い方

骨粗鬆症のリスクが高いとされている人は、小柄でやせている、牛乳を飲む習慣がない人、体を動かすのが嫌い、アルコールをたくさん飲む、無理なダイエットをしたことがある人などであることが知られています。 特に関連性が高いとされているものは、ご本人の血縁者に大腿骨頸部骨折の既往がある場合、45歳より前に閉経した場合、喫煙歴がある場合、副腎皮質ステロイドを使用していた場合があります。

骨粗鬆症に良い生活習慣や食生活は?

骨粗鬆症予防の基本は食事と運動です。食事はカルシウム、ビタミンD、マグネシウムを十分に摂取することですが、日本人の食事の平均摂取量で必要量に満たない栄養分がカルシウムです。カルシウムを十分にコンスタントに摂取することが大事ですが、乳製品は吸収率が40%と高く、調理する必要もないので定期的に摂取するには最適です。一日摂取量(最低600mg)の半分は乳製品から取るようにすることがひけつです。牛乳が飲めないひとは、料理に利用するか、豆類、小魚、豆腐、海藻などをこまめに取ることが必要です。またカルシウムの吸収を阻害するものにリン、塩分の摂りすぎ、過度の飲酒がありますので、バランスの良い食事が大事です。また骨が丈夫になるためには運動負荷が必須です。体に衝撃が加わる強い負荷が最も有効ですが、中高年は関節の障害、心肺に及ぼす影響などからウォーキングなど軽い負荷で長く持続させることが有効です。

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料金表

プラセンタ配合ドリンク 1か月 11,000円

※全てのお会計にクレジットカード、交通系電子マネーご利用頂けます。
「VISA / mastercard / JCB / AMEX / Diners / DISCOVER / Suica / PASMO / WAON / nanaco」

更年期障害とは?